自動車教習所にはいろんな職業の人が来て、普段は見せてくれない裏側のようなものを見せてくれることがある。中でも意外に思ったことは、学校の先生という職業は人にモノを教えるのが商売なのに自分が人から教わることにかけては、まったくの素人だったということである。いつだったか、同じ高校の先生と生徒が教習所で一緒になって、「なんだ、お前、いつから通っているんだ」「先生こそ、不器用だから免許はいらねえ、なんて威張っていたろう。考えを変えたのか「おう、変えたさ。免許ぐらい持っていないと、嫁さんだってもらえないしさ」なんていう微笑ましい会話を交わしていたのであるが、生徒の方がセットの期間で十分仮免許までいったのに、先生の方は取れずに追加教習と延長教習を繰り返していたことがめった。しかも、ついさっき説明したことをまったく覚えていなくて、一体何を聞いていたんだろうと思ったこともあったのだ。メモを取りながら間いているのに、まったく違うことを考えているのか、しゃべっているこちらの方が悩んだりしたが、結局、この先生は人にモノを教えてもらうことがかなり苦手ということがわかったのである。世の中にはそういう人がいるが、たまたまこの場合は職業が先生ということであるが、ベテランの教官の話では、「先生という職業は人に教えることができても、教わるのは苦手の人が多いんだ。生徒に教えるマニュアルが身についているから、教わるマニュアルがないんだ」ということらしい。しかし、人からモノを教えてもらうのに誰だってマニュアルなど必要としなくても、理解できるのではないだろうか。教わり方が悪いから理解できないのである。素直に相手の言うことに耳を傾けていれば、どんな人にでもわかるようになっているのが、教習所の教習内容なのだ。私か思うのは、多分この人は車の運転をバカにしているのではないか。そして、性格的に自分が中心になっていつも誰かに話をしていないと、落ち着かず、そのことに耐えられないのではないかとも思えるのだ。さらに、こういうタイプは人に教えることや注意したり、怒ったりするのは好きなのだが、その逆は嫌いで、要するに自己中心的な性格なのである。こういうタイプに特効薬はない。本当に自分を捨てて、教官の言うことは正しいと自分が納得できるようになるまで時間をかけて勉強してもらうしかないと思われる。